FC2ブログ
嵐の二宮和也君が大好きな 主婦のひとりごとです。
医学的解説③ブラックペアン
2018年05月03日 (木) | 編集 |



 2話の後半では我々心臓外科医が将来経験するであろう

恐ろしい合併症が出てきました。

スナイプによる僧帽弁置換術後左室破裂です。


僧帽弁置換術後左室破裂

2話後半の山場です。

スナイプ ( 経心尖カテーテル僧帽弁置換術

:詳細説明はvol .8をご参照ください )

による小山さんの手術が始まりました。

僧帽弁手術が誰にでもできるというコンセプトで高階先生が

推しているスナイプを関川先生が使用します。

関川先生は左利きで右手で人工弁をリリース

( 留置する:引き金を引く ) しなければならないところを、

左手に持ち替えて引き金を引いてしまいます。

「 人工弁を留置する際にとっさにスナイプを利き手に持ち

替えたことが災いしたか 」

「 初めて行うスナイプ手術だ。

かすかな恐怖が器械の操作を狂わせた 」 。

ほんの些細なミスが命にかかわるミスにつながるというのが

心臓の手術です。

一つの心臓手術を完遂するのに、その作業工程は細かく

分けると数百、千近くに及ぶのですが、その一手一手を

正確に、確実に丁寧に積み上げていかなくてはいけません。

数百に及ぶ作業工程を数十にもみたない作業工程にまとめる

ことで、誰にもできる僧帽弁手術を可能にしたスナイプは、

その一手一手の重みが非常に重く、一手のミスが取り返しの

つかない大惨事につながります。

通常であれば、左房と左室の間に僧帽弁という扉 ( 弁 ) が

あるのですが、その弁の枠組み ( 弁輪 ) に人工弁を

フィット ( 圧着 ) させないといけないのですが、斜めに

弁を入れたことによりフィット ( 圧着 ) せずに、左室側に

弁がずれてしまい、左室に落っこちてしまいました

( 脱落;マイグレーション ) 。

佐伯教授はマニュアル通り回収デバイス

( 回収装置;先端にツマミがついていて、それで人工弁の

ステント部分を把持し、おそらく外筒のようなものに弁を

収納して外に出すような仕組み ) での人工弁の回収を

指示します。

もうパニックになっている関川先生はどうすることもできません。

高階先生が人工弁をツマミで把持した後、すこし引っ張って

しまったのか、人工弁の周りのステント部分が左心室の筋肉に

引っ掛かり筋肉が裂けて、出血してしまいます ( 左室破裂 )。

この左心室の筋肉が裂けて出血することを 「 左室破裂 」

と表現します。

最初研修医のころに先輩から僧帽弁手術の一番怖い合併症は

左室破裂だと教えられた時に、心臓がバーンって破裂

するんだ!それは大変だ!と思ったのですが、別にバーンと

破裂するのではなく、心臓の筋肉が裂けて出血してしまうことを

左室破裂と呼ぶのです。

破裂と大げさに表現するにはそれなりの理由があって、この

左室破裂は非常に修復が難しい。

心臓 ( 左室 ) の筋肉は非常に繊細で脆く、一度切れて

しまうと、そこからどんどん繊維方向に裂けていってしまいます。

1話で佐伯教授が佐伯式手術 ( 僧帽弁形成術 ) をして

いる時に助手の柿谷先生に 「 あんまりクーリー拘引っ張るな 」

と指示を出すのですが、心臓は引っ張りすぎると容易に裂けて

いってしまいます。

私も僧帽弁手術の助手に入りだした時に、僧帽弁越しに左心室の

中にセッシを入れようものなら、

「 左室の中にセッシ、サクション ( 吸引 ) を突っ込むな!

左室破裂になるぞ! 」

と激怒されました。

少し引っ張りすぎただけ、触っただけで裂ける可能性があるほど

心臓の筋肉は弱く、脆いのです。

私自身がした手術では左室破裂の経験はないのですが、

500以上の僧帽弁手術にかかわり、2回ほど左室破裂を経験

しました。

それほど稀な合併症でありますが、同時に非常に恐ろしい

合併症で、僧帽弁手術をするときは心臓外科医なら皆この

合併症を恐れながら手術をしているといっても過言では

ありません。

通常の心臓の手術は正中切開といって胸の真ん中を縦に

切開して手術を行います。

胸骨という肋骨と肋骨の間にある板のような骨は電気

ノコギリで切ってしまいます

( もちろん最後はワイヤーというステンレス素材やチタン製の

金具できっちり合わせて手術を終えます ) 。

通常の僧帽弁手術は右側左房切開といって、左房の右側を

切り左房から僧帽弁を見て修復や置換を行います

( 僧帽弁を上から見るイメージです ) 。

僧帽弁手術後左室破裂は通常よりも大きな弁をいれてしまったり、

先ほど言ったように左心室を無理に引っ張ったり、セッシや吸引、

そのほかの管で傷付けたり、針で左室筋肉を引っかいたり等が

原因で起こってしまいます。

修復は非常に厄介で、人工弁置換しているのであれば人工弁を

取り外し、左心室の内側からフェルトという、柔らかい素材の

布を使用して縫い合わせます。

さらに医療用の接着剤を使用して筋肉を補強します。

かなり頑丈に修復しないと、心臓を動かすとさらに裂けていって

しまいますので、非常に大変な手術になります。

2話に出てきたこのスナイプによる人工弁脱落、左室破裂は

将来世界のどこかの心臓外科医が絶対に遭遇するであろう

合併症であることは間違いありません。

この場面を見た心臓外科医の先生方は自分ではどうやって

修復するだろうといろいろと治療方針を考えたはずです。

自分ならまず人工弁が脱落した時点で正中切開に切り替えて、

胸の真ん中を切開して、人工心肺を確立して、大動脈を遮断して、

心臓を止めて、左房を切開して、人工弁摘出、左室破裂修復に

かかると思います。

外科医は自分の得意なというか慣れた状況にもっていって

手術をするのが鉄則ですから。



渡海先生の外科医的アドリブ

渡海先生は 

「 このままもう縫ってっちゃうよ。

外からいっちゃおう 」

と言って左心室の修復を行うのですが、これは、人工弁を先に

取り出さないで人工弁をそのままにして心室の内側からでなく、

外からフェルトを使用して修復してしまおう、という意味です。

このセリフは台本にはなく完璧に二宮さんのアドリブなのですが、

不思議なことに本当の外科医のような、つまり状況を深く

理解している上でないと出ないセリフです。

こういったことが撮影では結構あって、アドリブで言うセリフが

本当の外科医のようで正直ビビります。

渡海が乗り移っているとさえ思ってしまうほどです。

左開胸での左室破裂修復、人工弁摘出

( よーく見ると人工弁が折りたたまれて出てきています。

人工弁に絡みついた左室の筋肉をメッツェンという外科ハサミで

はがしてさらに折りたたんで摘出するという神業! ) 、

僧帽弁手術まで渡海先生はこなしてしまうのですが、この方法で

修復する心臓外科の先生はいるのかな。

とにかく、ここの場面の渡海先生の技術は卓越した技術であり、

左室破裂の修復をするときの心筋へのファーストタッチを見ると、

非常にデリケートで、さらに組織に触れていないときの糸裁きの

スピードは神がかっていて、まさに悪魔的精緻を極めた手技と

表現するしかありません。


心臓外科医の立場から見てもすごく興味深く、腹部大動脈瘤破裂

という日常的に遭遇する病気もあれば、スナイプによる左室破裂

という非常に未来志向の合併症を扱った第2話でした。

第3話もマニアックで興味深い内容ですのでぜひご期待ください!



手術でもアドリブなんて、にのちゃん凄い 

ブラックペアンの事で頭が一杯で、 「 検察側の罪人 」  の新しい

予告が出たそうですが、そちらまで頭がまわりません。

ゆったりと予告や情報とかみたいです。 


 
スポンサーサイト





コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する